『のんちゃんのり弁』
アラサーの母親が奮闘する元気印の映画
9月26日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー
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巷では今、お弁当ブーム。もちろん理由のトップには世界的な経済不況が挙げられるが、ほかにも健康志向など要因はさまざまだろう。そんなご時世にピッタリの映画が誕生した。 原作は、漫画家・入江喜和の同名コミックで、渡辺典子の主演により、97年と98年にTVドラマ化もされている。
今回、ヒロインの小巻を演じるのは、小西真奈美。今の時代に沿うようにキャラクターも微妙にアレンジされている。思い立ったが吉日。下町育ちの小巻は、年下のダメ亭主に離婚届を突き付け、娘ののんちゃんを連れて、母親の住む実家に出戻るのだが、無鉄砲というか、非常識というか、危機感もなく仕事の面接を受けては落ちまくり、貯金もないのに慰謝料にも無頓着な有様。
最近の10代、20代の若者にはもっと堅実なイメージがあるが、小巻と同じアラサー世代にはゴロゴロいそうなタイプで、説得力がある。小西は、そんな31歳の母親像を、持ち前の清潔感を備えたフェミニンな個性で体現している。
そして、社会常識に欠ける小巻だからこそ、小料理屋"ととや"の主人に弟子入り志願して、やがて弁当屋を開業する展開にも強引さを感じず、逆に彼女のバイタリティーから我々観客もエネルギーをもらえるのだ。
監督は、『いつか読書する日』の緒方明。小巻の性格や感情を、細かい表情やセリフではなく、夫婦ゲンカのシーンに代表されるように、俳優の身体全体を使って表現してみせる。そのため、画面に運動感覚が生まれ、小巻のバイタリティーが一層際立つ効果を生んでいる。
そして、忘れてはならないのが、小巻が作る"のり弁"だ。何と5層になったものまで登場する。ひじきやホウレン草のごま和え、卵そぼろなど重ねた具もバリエーション豊かだし、まぜごはんも色とりどりで、本当に美味しそう。劇中に、断面図を使った解説も出るので、家庭で試してみることもできそう。登場するいろんな種類ののり弁はいずれも、売れっ子フードスタイリストの飯島奈美が、原作コミックをベースに考案した映画用のオリジナルだ。
もちろん、のり弁だけでなく、ととやの料理も美味しそうで、本作は生命の源である食べ物と、小巻のバイタリティー、そして俳優の身体が作り出す運動感覚が相乗効果となって、見る者にエネルギーをくれる元気印の映画に仕上がっている。今のご時世にピッタリの映画とは、そういう意味である。
文・外山真也
原作は、94年から「モーニング」に連載された。入江さんは、10年以上前の作品なので映画化のオファーにも最初は半信半疑だったと、照れながらも質問に答えてくれた。
まずは、小巻を演じた小西真奈美について。

「あんなキレイな方が?みたいな(笑)。私から見れば女優さんは皆キレイなので、誰が演じてもびっくりしたと思いますけど、特に小西さんはモデルみたいでスタイルも良いですから。
漫画の小巻のイメージは、子供の頃、母があんなかっこうをしてたりとか、離婚してしまったいとこのお姉ちゃんがいたりとか、身近なところから発想した人物だったんです。
それもあって、最初はちょっとピンとこなかったのですが、ロケを見させていただいたら、原作のイメージ通りだったので、女優さんってスゴイ!と思いました。
小西さんには、清純派で透明感のある女優というイメージがあったのですが、小巻は下品なことも口走るし、ガラの悪いところがありますからね」
それに対して、岸部一徳が演じる"ととや"の主人・戸谷さんには、明確なモデルがいたそうだ。
「勝手にイメージして描かせていただいたんですが、落語家の古今亭志ん朝師匠です。でも、岸部さんはいぶし銀で素敵でした。父が昔、小料理屋をやっていましたので、懐かしい気持ちで拝見しました」
映画に登場する料理が本当に美味しそう。戸谷さんの作るサバの味噌煮もそうだが、とりわけ小巻がのんちゃんのために作る5層になったのり弁に驚かされる。

「あののり弁は素晴らしいですね。私が食べていたのは、せいぜい2段ぐらいで、全部のりでできていましたから。でも、脂っぽくて濃厚な食べ物が苦手だったのと、母がのりを細かくちぎってくれていたので――のりが1枚のままだと、ビラーッと取れちゃうんです――のり弁は大好きでしたね。実は、父が板前だったせいで、母は料理が得意じゃなかったのですが、のり弁だけは母が作ってくれたんです」
のり弁は、入江さんにとって"おふくろの味"だったのだ。
「この漫画は自分が一番シャカリキになって描いていた時代の作品だったので、どこか"暑苦しい"イメージを持っていたのですが、こうして映画に作り直していただいたものを見ると、確かに主人公は暑苦しいのですが、でも一生懸命やっていると、ちょっと感動しました。ちゃんと元気が出る感じになってる。もちろん、それは監督さんの手腕なんですけど、やっぱり若いなぁと。自分も当時は若くて、何にも分かってなくて、生意気なことばかりやってたんだなと、恥ずかしくなりながらも懐かしい感じがして、やっぱりこうして作っていただけて幸せだと思いました」
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| 「新装版 のんちゃんのり弁 上・下」(各790円/KCデラックス) |



