映画に見る食

『ホノカアボーイ』

日系移民の町ホノカアが教えてくれる
"幸せ"の意味


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"ホノカア"とは、ハワイ島に実在する日系移民の町の名前。吉田玲雄の紀行エッセイに基づく実話である。

CM界で活躍する脚本の髙崎卓馬と監督の真田敦、撮影も女性フォトグラファーの市橋織江で、主題歌はキョンキョンというスタッフ構成からも分かるように、緻密に構築されたストーリー展開や、複雑な登場人物が織りなす心理のあやを楽しむ映画ではない。

青い海と太陽、ゆったりと流れる時間、癒し系キャラの主人公・レオ(岡田将生)が生むホンワカした空気感に浸る映画なのだ。

映画のキャッチコピーの中に、「僕が出会った風と、恋と、ごはん。」とある。ゴハンが重要な役割を担い、映画の空気感にビーさん(倍賞千恵子)が作る手料理の数々が大きく貢献しているのだ。


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ビーさんとは、町で有名な料理上手のヘンクツばあさん。

彼女(蒼井優)にフラれ、大学を休学して、ホノカアでモラトリアムな日々を過ごすレオは、ビーさんの提案により、その手料理を食べるべく、毎日せっせとビーさんの台所を訪ねることになる。

ロールキャベツ、きんびら、煮しめ、ちらし寿司...。日系の町だけに日本食を思わせる献立はどこか懐かしく、家庭料理の温かさに満ちている。


だが、ポイントは、料理がもたらすレオの成長ではない。人生の浅い若者は食べることに夢中で、それを作るビーさんの感情に無頓着だ。

だから食べる側ではなく、作る側に料理が及ぼす変化にこそ、この映画の真価があるように思える。

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レオと出会い、"誰かのためにゴハンを作る幸せ"を実感するビーさん。

この映画は、「人はひとりでは生きられない」という本質的な真理を、声高でなく、ホノカアのゆったりと穏やかな風に乗せて、我々に届けてくれるのである。

また、レオを演じる岡田将生は、これが映画初主演の"イケメンボーイ"。映画『天然コケッコー』やTVドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」「太陽と海の教室」などで注目された、現在19歳の新鋭だ。


今年は『ハルフウェイ』と本作の公開に続き、『重力ピエロ』(5月23日公開)『僕の初恋をキミに捧ぐ』(秋公開)と主役級で出演する話題作がめじろ押し! 大ブレークも間もなくなので、この映画ともども要チェックだ。

文・外山真也




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この映画では、倍賞千恵子扮するビーさんの手料理が本当に印象的だ。担当したのは、料理家・高山なおみさん。素材を生かしたシンプルな料理が評判で、書籍や雑誌、テレビなどで活躍中だが、映画は初体験だった。

「いちどはお断りしたのですが、脚本の髙崎(卓馬)さんが作られたCMなどをDVDで拝見したらすごく感動してしまって。髙崎さんの感性に共感したんです。

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映画の終盤で、ビーさんがいなくなる前にロールキャベツを作りますよね。

80代の日系人のおばあちゃんの台所を取材した時に、クリームチーズや味噌が入ったプラスチックの容器をきれいに洗ってとってあり、タッパとして使っていたんです。

それで、いろんな形のタッパに入れてレオに残したらどうかと提案しました。

映画の端々にそういう実際のことが取り入れてあります。

ロールキャベツは、調べてみると、ハワイ島の料理本の中にちゃんとある。ビーさんだったら、きっとレオに教えながら作るんじゃないかとか、アイデアを出しました。

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マラサダも、向こうではチェーン店やベーカリーのものがポピュラーですが、ビーさんの味はお店で作るものとは違うだろうと思って、ちょっと懐かしい、ドーナツに近い感じにアレンジしました。

ハワイ島は本当に食材の宝庫で、アボカドが木になっていて、道を歩いていると貰ったりするんです。鮮やかな花々も、盛りつけに使ったんじゃないか。レモンやライムを枝からもいだら、絶対に絞ってお寿司にしただろうとか。そうやって、メニューが決まっていきました」


『ホノカアボーイ』の仕事を引き受けた時、最初に決めたのは、ハワイ島の食材と調味料だけで作るということ。それから、ふだん作っている高山なおみの料理から離れ、とにかくビーさんになりきろう!と思ったと言う。

「撮影前の取材は、自分がビーさんになっていく過程でした。実際にビーさんの隣の部屋に住んでいた方にも会い、煮しめのコンニャクはにしていたとか、食事には必ずスープか味噌汁がついたとか、ジャガイモの切り方は大きかったか小さかったか、どんな皿に盛りつける人だったのかとか。そんなふうにして、自分の中でもビーさんが出来上がって本番に臨んだんです。

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でも、撮影が始まって、『毎日来なさい。毎日ここで、ゴハンを食べていきなさい』という倍賞さんの声を聞いた時に、ビーさんがそこにいると初めて気づかされました。倍賞さんが演じる深くて情感のこもったビーさんの前では、私が思い描いていたビーさんはまだまだ甘いものだった。倍賞さんのビーさんを感じることで、そこからまた料理や盛りつけが変化していったんです」

料理家・高山なおみさんの公式ホームページ
http://www.fukuu.com/




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