『食堂かたつむり』
食べることと命に対する敬意に満ちたリアルな寓話
2月6日(土)より全国東宝系ロードショー
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メルヘンチックで、どこかおとぎ話を思わせるテーストだが、決して嘘っぽい映画ではない。日常に深く根差したリアリティーが感じられるのだ。それは、本作が"食べること"と"命"に対するリスペクトに満ちているからだろう。
これまでに取り上げてきた作品の中でも、ドキュメンタリーを除けば、最も「だんだんたんぼ」向きの映画かもしれない。
2008年に「王様のブランチ」(TBS系)のBOOKコーナーで絶賛されて話題となった、小川糸のベストセラー小説が原作だ。
失恋=結婚詐欺のショックで声を失った主人公の倫子(りんこ)が、故郷に戻って食堂を開業。そりの合わなかった奔放な母親や村の人たち、さらには母親の"愛豚"エルメスとの交流を通じて再生していくハートフルな物語である。
そして、倫子が村の人たちとかかわっていく上で欠かせないのが、彼女が作る料理。
裏の山で採れたザクロのカレーにイチジクのフルーツサンドイッチ、女子高生の初恋を実らせる季節野菜を使った「ジュテームスープ」。エルメスのためには、クルミ入りのパンを焼いてあげる。
自然の食材や、村の農家で採れた有機野菜。それだけでも十分に「だんだんたんぼ」な映画なのに、それだけではない展開が、後半に待っている! 生きる営みとは、命を食べる行為であり、命に対する敬意であることが、この展開から自然に感じとれるのだ。
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倫子を演じるのは、柴咲コウ。メルヘンチック世界観とは一見真逆の配役のようにも思えるが、彼女の中性的な個性が、母親役・余貴美子のフェミニンな魅力ときれいにコントラストをなし、さらに失声症という設定を逆手にとって、その饒舌で強烈な"目力"を遺憾なく発揮。見事にストーリーを牽引している。
さらに、倫子が料理を作るシーンは、顔が写らなくても全部、柴咲が吹き替えなしで演じているのだ。監督の富永まい(『ウール100%』)曰く「柴咲さんはすごく料理がお好きで。多分、もっと手際良くできると思うんですが、これはプロの料理人の手際の良さを見せる映画ではないので、丁寧に、祈るように、できるだけ念を込めて作ってもらうようにしました」と。そう、料理そのものや、食べる行為だけでなく、誰かのために料理を作ること自体も、重要なメッセージになっているのだ。
本作は、"食べる"ためのあらゆる行いを通じて、"命"や"生きるということ"について考えさせられながら、見る側の心も癒してくれる、メッセージ性と娯楽性を兼ね備えたリアルなファンタジーなのである。
文・外山真也
この映画に登場する料理を手掛けたのは、料理とグラフィックデザインのチーム「オカズデザイン」。料理長の吉岡知子さんは、原作者の小川糸とは家族ぐるみの付き合いだと言う。

「小川さんとは3年前に知り合ったのですが、その前から偶然お互いにブログを愛読していたんです。実際お会いして、お互いの気質がよく似ていたり、食への好みや姿勢が近く、あっという間に仲良くなりました。その小川さんが、『食堂かたつむり』の料理に一番近い料理人ということで、監督やプロデューサーに私たちを推薦してくれたんです」
だからだろう。映画に出てくる料理は原作にとても忠実だ。どういうコンセプトに基づいて作られているのだろう?
「映像用のおいしく見せる料理ではなく、実際に食べておいしいものを作るよう心がけました。原作や脚本からイメージを膨らませ、倫子ならこうするだろうという視点で、試作を繰り返しながらレシピを考えていきました。一人でやっている食堂なので、料理の仕込みの時間が長く、手間をかけてゆっくりと仕上げていくのが特徴です。一切手を抜かず、妥協しない料理人なので、食材も最高級のものを選んで使うようにしました」
先日、小説「食堂かたつむり」のレシピ本「食堂かたつむりの料理」も発売された。
「レシピ本は小川糸さんの世界観に、映画では富永監督の描く世界観に近づくように若干レシピを変えています。器やスタイリングも全く違います。具体的には、映像的な色合いを大事にして、ジュテームスープは、倫子のイメージカラーである明るいイエローとオレンジの中間色に合わせましたし、ザクロカレーも最初のレシピでは、もう少し黒っぽかったんですけど、見た人がすぐにカレーと分かる色に、味がブレないように調整しながら近づけていきました」
そして、完成した作品について、こう語ってくれた。
「倫子は、食と人に対して真摯に向き合っています。決して華やかな映画ではないと思いますが、"丁寧に人をもてなす"ということを、静かに感じ取れる映画になっていると思いました」
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| 「食堂かたつむりの料理」 (小川糸、オカズデザイン/発売中/¥1470/ポプラ社) |
「豚ごはん」 (オカズデザイン/2月16日発売/¥1470/ポプラ社) 豚を美味しく食べつくすための、豚肉料理のレシピが満載。 |
©2010「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ






